こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は『外国人社員が産休・育休を取得する際に企業が意識すべきこと~⑥』についてお話していきたいと思います。
前回までで【外国人社員が産休・育休を取得する際の会社が取り組むべき事項】として、
① 育児介護休業法や産休・育休取得制度の紹介を定期的に行う
② 産休・育休取得に関する意向や休業・復帰イメージを面談する
③ 業務の引継ぎや休業中・復帰後の業務開始イメージを共有しておく
④ 育児介護休業法上、就業規則上対応すべき人事労務管理手続きを行う
があるというお話をしました。今回も④の続きからお話していきたいと思います。
【産前産後休業中の人事労務手続き】
➃ 出産育児一時金の差額請求に関して
被保険者の出産時の医療費や分娩費用の支払い等の経済的負担を軽減するために、健康保険から支給される一時金を出産育児一時金といいます。出産育児一時金の支給金額は、通常50万円(産科医療補償制度未加入の場合は48.8万円)で、被保険者の窓口での支払いを軽減できる仕組みとして、直接支払制度があります。
直接支払制度とは、医療機関等が被保険者に代わって協会けんぽに出産育児一時金の申請を行い、直接出産育児一時金の支給を受けることができる制度となります。
そのため、医療機関でかかった医療費や分娩費用から出産育児一時金の金額を控除する為、被保険者が医療機関の窓口で支払う金額を抑え、通常出産によって多額の出費が発生する所、一時的に資金繰りがしやすくするメリットがあります。
出産育児一時金の額が2023年4月1日から50万円に引き上げられた為、医療機関で発生する医療費よりも出産育児一時金の額が上回るパターンも発生し、直接支払制度を利用している方で、出産育児一時金と医療費の差分の金額が余るパターンも出てきました。
そういった場合は、協会けんぽへ健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書」又は「健康保険出産育児一時金差額申請書」の提出を行う必要があります。こちらも出産手当金と同様申請主体は被保険者本人となります。
直接支払制度を利用された後に医療機関等へ出産育児一時金の支給が終了した内容を示す「支給決定通知書」が通常協会けんぽ等から被保険者宛に届くので、その通知書と同時期に届く「健康保険出産育児一時金差額申請書」を協会けんぽ等に提出すると、比較的添付書類の提出等の追加の手間が発生せず、従業員にとっては対応しやすいかと思います。
基本的には、被保険者本人にこのような出産育児一時金の差額請求の手続きを一任しても良いかと思いますが、外国人社員の中には協会けんぽ等から来る通知書の内容が難解で理解できず、本来申請できた制度をうっかり申請し損ねるパターンも考えられます。
その為、会社の人事部としては、外国人社員の産休・育休中のフォローの一環として、上述しました出産育児一時金の差額請求に関して、案内するのが良いかと個人的には思います。
次に出産後56日経過後から子供が1歳の前日となるまでの「育児休業」中に会社が行う人事労務手続きに関してお話しして参ります。
【育児休業中の人事労務手続き】
① 育児休業取得申請書の提出依頼
出産日が確定すると、出産前後の産前産後休業期間や、その後の育児休業期間も確定します。出産予定日と出産日が変更された等、産前休業取得時の申請で提出した内容と異なる事で、育児休業期間が変更されるパターンが多いです。
よって、その場合は出産後に再度従業員から育児休業取得申請書を提出してもらうことが重要です。原則では育児休業取得申請書は育児休業開始の1ヶ月前までに会社へ提出する必要があります。出産予定日前に子が出生した場合など一定の特別な事由がある場合は、1週間前の提出となっても構いません。
上述しました通り、育児休業取得申請書の提出期限に一定の猶予があるにせよ、会社としては従業員が出産した後に出来るだけすぐにこちらの育児休業取得申請書の提出を依頼する事が重要です。
一番良い方法としては、産前休業を取得する前に簡単でも構わないので、「育児休業取得申請書」の再提出の可能性がある旨を産休・育休を取得する従業員に伝えておくことが重要です。
本日は『外国人社員が産休・育休を取得する際に企業が意識すべきこと~⑥』についてお話させて頂きました。次回も続きからお話していきたいと思います。
執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。番組プロデュース、ポッドキャストデザイン等のPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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