
こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は『2025年労働法関連法改正と企業の労務管理で対応すべき事③』についてお話していきたいと思います。
前回までは【2025年中に予定されている育児・介護休業法の改正】として以下があると説明させて頂きました。
(1)子の看護休暇の拡充
(2)所定外労働の制限
(3)育児のためのテレワーク導入
(4)短時間勤務の代替措置
(5)育児休業取得状況の公表義務
(6)介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
(7)介護離職防止のための雇用環境整備
(8)介護離職防止のための個別の周知・意向確認等
(9)介護のためのテレワーク導入
(10) 柔軟な働き方を実現するための措置の義務化
(11) 仕事と育児の両立に関する意向聴取・配慮の義務化
今回は続きの(6)から、お話していきたいと思います。
次に(6)ですが、まず、身体上・精神上の障害や病気により、2週間以上の期間にわたり常時介護が必要な状態の介護対象者を持つ従業員が、対象者1人の場合5日、2人以上の場合10日取得できる休暇を介護休暇と言います。
介護休暇は1日単位でも時間単位でも取得する事が出来ます。介護休暇は法律上無給で構わないので、取得のケースで言うと突発的、臨時に介護が必要になった場合に利用する事を想定しています。
一方で、介護休「暇」と比較して長期の休業を想定している介護休「業」に関しては、介護対象者一人につき、通算93日以上取得でき、取得のケースで言うと、在宅介護等比較的軽度な状態で介護を始め、これからの介護に備える等、介護と仕事の両立を本格的に始める際の準備を行っていく上で利用する事が多いです。
介護休業中は、雇用保険加入者であれば雇用保険から介護休業給付金が申請できます。介護休業を開始する前のおおむね6か月間の給与を平均して約67%の金額を受給できます。
育児休業期間中と違い、介護休業期間は健康保険料、厚生年金保険料等の免除はありません。
話は戻りまして、この介護休暇の取得に関しては、今まで会社と従業員代表が別途労使協定を締結すれば、①週の所定労働日数が2日以下②継続雇用期間6か月未満の方を介護休暇取得の対象外とすることが出来ましたが、この4月の法改正で②の条件が撤廃され、週2日以下勤務の方のみ除外する事が出来るようになりました。
例えば前職をやむを得ず介護の理由で退職した方が、転職で違う会社に就職した際に、入社した手で有給休暇も無く、介護休暇も取得できない会社であったことから欠勤を余儀なくされるケースがあります。
今回の法改正で入社すぐの方でフルタイム勤務の方も、介護休暇を取得する事が出来るようになりました。
次に(7)ですが、介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下①~④のいずれかの措置を講じる必要が出てきました。
① 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
② 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
③ 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
④ 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
いずれも、積極的に従業員が介護休業を取得する事を会社が応援したり、宣伝を行ったりする事で、介護休業を取得する従業員側の心理的ハードルを下げる事で、介護と仕事の両立を促すことを目的に法改正されたのだと思います。
次に(8)ですが、介護に直面した事を会社に申し出た労働者に対して、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項の周知と介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向の確認を、個別に行わなければならなくなりました。
①介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
②介護休業・介護両立支援制度等の申出先
③雇用保険上の介護休業給付金に関すること
日本ではまだまだ自ら権利の主張を行う方が少なく、法律上や会社の就業規則上、申請すれば従業員が利用できる制度があったとしても、自己主張せず利用しない方が多いです。
そういった状況も含めて、介護に直面した等の状況を会社に報告するのみで、介護休業等の権利の主張を会社からの配慮の下、従業員が行いやすくなることで介護休業の取得率を向上しようという目的で法改正されたのだと個人的には思います。
本日は『2025年労働法関連法改正と企業の労務管理で対応すべき事③』についてお話させて頂きました。次回も続編をお話ししていきたいと思います。

執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。番組プロデュース、ポッドキャストデザイン等のPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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